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2026.06.04
相川スリーエフ
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家電量販最大手のヤマダホールディングスと、西日本を地盤とする大手家電量販店エディオンが経営統合に向けて協議しているという報道は、単なる家電量販店同士の大型再編として見るだけでは、少しもったいないニュースです。
建材・サッシ・住宅設備業界に身を置く私たちから見ると、この動きには非常に強い既視感があります。なぜなら、いま家電業界で起きていることは、実はサッシ・住設業界が20年以上前から経験してきた構造転換に、とてもよく似ているからです。
市場の伸び悩み、ECの普及、異業種参入、価格競争の激化。こうした環境の中で、家電量販店は「家電を安く売る店」から、「住まいと暮らし全体を提案する企業」へ変化しようとしています。
これは、かつてサッシ・住設業界で起きた、メーカー再編、流通再編、そしてリフォーム市場への移行と非常によく似ています。
家電量販業界では、単にメーカーの商品を仕入れて安く売るだけでは、以前ほど大きな成長が見込めなくなっています。ネット通販、価格比較サイト、ディスカウントストア、異業種からの参入により、競争の軸は大きく変わりました。
一方、サッシ・住設業界でも、新設住宅着工数の減少、市場の停滞、価格競争の激化という大きな変化がありました。単品の建材や住宅設備を売るだけでは、生き残りが難しくなったのです。
サッシ・住設業界では、トステムとINAXを軸とした再編から、現在のLIXILにつながる大きな統合が進みました。窓、トイレ、キッチン、外構、内装建材など、これまで別々だった商材を一体化し、「住まい全体」を提案する方向へ進んだのです。
今回のヤマダHDとエディオンの動きも、家電量販店という枠を超え、家電、家具、住宅、リフォーム、PB商品開発を含めた「暮らしまるごと」への進化と見ることができます。
かつて日本には、地域ごとに「町の電気屋さん」がありました。ナショナルショップ、日立チェーン、東芝系特約店など、地域に密着し、家電販売だけでなく、修理、設置、配線工事、御用聞きのような役割まで担っていました。
しかし、大型家電量販店が登場し、大量仕入れによる価格競争が始まると、町の電気屋さんは価格では勝てなくなりました。多くの地域店は姿を消し、残った店も従来の「商品販売」だけでは生き残れなくなりました。
それでも今なお生き残っている町の電気屋さんがあります。そうした店は、価格ではなく、技術や利便性をサービス化しました。高齢者宅への訪問、エアコン工事、修理対応、即日対応、地域密着の安心感。つまり、「物売り」から「技術とサービス」へと役割を変えたのです。
実は、住宅サッシ業界でも非常によく似たことが起きました。
かつて地域のサッシ販売店は、地場工務店に対して、住宅サッシ、ガラス、住設、内装建材、外壁材、断熱材などを納めていました。しかし新設住宅着工数が減少し、地場工務店そのものが減っていくと、サッシ販売店は大きな方向転換を迫られました。
販売店が弱くなったというより、主な販売先だった地場工務店が減っていったのです。これは、町の電気屋さんが大型量販店の台頭で顧客を失っていった構図とよく似ています。
町の電気屋さんが「修理・設置・地域対応」で生き残っているように、サッシ販売店もまた、「物を納める会社」から「施工力と提案力を持つ会社」へ変わっていきました。
これからの時代、単に商品を安く仕入れて売るだけでは、差別化が難しくなります。現場を知り、採寸し、納まりを考え、施工し、お客様の困りごとを解決する力こそが価値になります。
住宅着工数の減少を見据え、サッシ・住設メーカー側でも大きな再編が起きました。その代表例が、トステム、INAX、サンウエーブ、東洋エクステリア、新日軽などを含む、現在のLIXILにつながる大規模再編です。
この再編は、メーカー側から見れば「住まい丸ごと」を提案するための巨大化であり、多角化でした。しかし流通の現場では、簡単ではありませんでした。
もともとトステム系のサッシ販売店は、水回り商品も販売していました。一方でINAXには、INAX系の代理店や販売網がありました。統合前は競合していた流通網が、LIXILという一つのグループの中に入ったことで、現場では商流の整理が難しくなったのです。
ここが非常に重要です。住宅設備とサッシでは、流通の形が少し違います。
水回り中心のリフォームの場合
メーカー → 住設代理店 → リフォーム会社 → お客様
窓・ドア中心のリフォームの場合
メーカー → サッシ販売店 → リフォーム会社 → お客様
ただし現場はさらに複雑です。水回りを中心としたリフォームであっても、窓や玄関ドアの交換が必要になることがあります。その場合、住設代理店やリフォーム会社が、サッシ販売店に採寸・手配・施工を依頼するケースが多くなります。
つまり、単純に「メーカーからお客様へ」という一本線ではありません。工事内容によって、住設代理店が主導する場合もあれば、サッシ販売店が主導する場合もあります。主導権が工事内容によって変わるのです。
水回り商品では、渡辺パイプ、ナイス、ジャパン建材のような大手代理店が大きな力を持っています。規模、物流、商品点数、仕入れ力において、小規模なサッシ販売店が正面から競争するのは簡単ではありません。
一方で、サッシや玄関ドアのリフォームには、採寸、現場確認、納まりの判断、施工手配、職人の技術が必要です。これは単なる物流では完結しません。
そのため、一時は住設代理店がサッシを扱い始め、流通が混乱した時期もありましたが、近年は少しずつ役割分担が戻りつつあります。水回りは住設代理店が強い。窓・ドアはサッシ販売店が強い。リフォーム市場では、この棲み分けが再評価されているのです。
LIXIL系の流通が住設も含めて広がっていった一方で、YKK AP系の販売店は、もともと水回りを主力としていたわけではありません。
YKK APは、TOTO、大建工業とのTDY連携によって、LIXILに対抗してきた歴史があります。そのためYKK AP販売店は、物売りというよりも、サッシ、玄関ドア、エクステリア、施工、現場対応に強い販売店として発展してきました。
結果として、YKK AP販売店は「技術を持つ販売店」という色が強くなりました。リフォーム市場では、この施工力と現場対応力が大きな武器になります。
さらに近年、サッシ販売店にとって大きな追い風が吹いています。それが、窓や玄関ドアの断熱リフォームに対する大型補助金です。
国の先進的窓リノベ事業、地方自治体の補助金、東京都のクール・ネット東京関連事業などにより、窓・ドアの断熱改修は大きな注目を集めています。
住宅着工数の減少で苦しんできたサッシ販売店が、今度はリフォーム市場、特に断熱リフォーム市場で忙しくなっている。これは非常に興味深い変化です。
こうして見ると、ヤマダHDとエディオンの統合は、単なる家電量販店同士の大型再編ではありません。
家電業界でも、メーカー、量販店、地域販売店、施工会社、リフォーム会社の役割が変わり始めています。大型量販店は単なる販売店ではなく、代理店機能、商品開発機能、住宅リフォーム機能まで持つ存在になりつつあります。
一方で、町の電気屋さんのような地域店も、価格ではなく、技術、修理、訪問対応、施工力によって生き残る道があります。
これは、サッシ販売店が「物売り」から「施工と提案の会社」へ変化してきた流れと非常によく似ています。
メーカー、大手代理店、販売店、小規模施工店。これらの流通構造の変化は、新聞記事ではあまり大きく取り上げられません。しかし現場で仕事をしている私たちにとっては、とても大きな問題です。
これからの時代、単に商品を右から左へ流すだけの会社は、ますます厳しくなるでしょう。重要になるのは、現場を理解し、施工でき、提案でき、お客様の困りごとを解決できる会社です。
家電量販業界も、サッシ・住設業界も、同じ方向へ進んでいます。
「安く売る」だけではなく、暮らし全体を支える。 「商品を納める」だけではなく、現場で価値を生み出す。
ヤマダHDとエディオンの統合が映し出しているのは、家電業界の未来であると同時に、私たちサッシ・住設業界が歩んできた歴史そのものでもあるのです。
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