住宅サッシの歴史 サッシの色を見れば、家を建てた時代がわかる? アルミカラーと日本の窓の変遷 シルバー、ゴールド、ブロンズ、ブラック、ステンカラー、シャイングレー。 住宅に使われるアルミサッシの色は、単なる好みではなく、 その時代の住宅デザインや暮らし方を映し出してきました。 雨戸付きサッシ、出窓、窓シャッター、電動シャッター、ペアガラス。 日本の住宅と窓が歩んできた約半世紀を振り返ります。 古い住宅の窓を見て、「この色は昭和のサッシだな」 「この窓シャッターなら平成初期頃だろう」と感じることがあります。 もちろん、サッシの色だけで建築年を正確に断定することはできません。 しかし、サッシメーカー、商品名、アルミカラー、ガラスの構成、 雨戸やシャッターの形式を組み合わせれば、 建てられた年代をある程度推測できる場合があります。 この記事では、住宅サッシを中心に、 トーヨーサッシからTOSTEM、現在のLIXILへと続く系譜と、 新日軽が展開してきた代表的なアルミカラーを、 日本の住宅の流行とともにご紹介します。 この記事の内容 アルミサッシが日本の住宅を変えた 住宅サッシとアルミカラーの歴史年表 トーヨーサッシ・TOSTEM・LIXILの代表色 新日軽の代表的なアルミカラー 出窓、雨戸、窓シャッターの変遷 ペアガラスが標準的になるまで サッシの色から築年数は推定できるのか アルミサッシが日本の住宅を変えた 現在では、窓にアルミや樹脂のサッシが使われていることは当然のように思えます。 しかし、戦後しばらくの日本住宅では木製建具が一般的でした。 木製建具には独特の風合いがありますが、 乾燥や湿気によって反りや収縮が生じやすく、 開閉しにくくなったり、すき間風が入ったりすることもありました。 そこに登場したのがアルミサッシです。 軽く、腐食しにくく、量産しやすいアルミサッシは、 高度経済成長期の住宅建設とともに急速に普及しました。 初期のアルミサッシは、素材の印象をそのまま生かした シルバー色が中心でした。 その後、和風住宅に合わせたゴールドやアンバー、 重厚感のあるブロンズ、都会的なブラック、 金属感を抑えたステンカラーへと選択肢が広がっていきます。 住宅サッシとアルミカラーの歴史年表 1960年代後半 アルミサッシの本格普及とシルバーの時代 シルバー 木製建具からの転換 住宅の大量供給が進み、寸法精度が高く、 維持管理しやすいアルミサッシが普及し始めます。 初期の代表色はアルミらしいシルバーでした。 1970年代 ゴールド・アンバー・ブロンズと和風住宅 ゴールド アンバー ブロンズ 雨戸付きサッシ 瓦屋根や木目の外装、真壁風の意匠に合わせやすい 茶系・金色系のサッシが広く使われました。 雨戸とサッシ枠を一体化した雨戸付きサッシも普及し、 戸袋、雨戸、障子を一つの開口部として納める形式が 戸建住宅の定番となっていきます。 トーヨーサッシの窓シャッター「イタリヤ」は1972年に登場。 雨戸とは異なり、シャッターを上部のボックスへ巻き上げる形式が 住宅用商品として展開され始めました。 1977年~1980年代前半 窓シャッターと電動化の始まり アルスライダー 電動イタリヤ ブロンズ 1977年には「アルスライダー」が登場し、 1980年には電動式の「電動イタリヤ」が販売されました。 現在では珍しくない電動窓シャッターですが、 住宅設備としての電動化はすでにこの時代から始まっています。 1980年代 出窓ブームとブラックサッシ ブラック ホワイト 出窓 洋風住宅 住宅の洋風化が進み、外壁の凹凸や立体感を強調するデザインが人気になります。 その象徴の一つが出窓です。 台形出窓、角形出窓、弓形に見せるボウウインドウなど、 正面から窓を張り出させる意匠が多く採用されました。 出窓の天板に花や置物を飾ることも、 当時の新しい暮らし方として提案されました。 同じ頃、重厚感のあるブラックや、 洋風住宅に合わせやすいホワイトも存在感を強めます。 茶系一辺倒だった住宅外観が、多様化していった時代です。 1986年 電動ブラインド雨戸「アリーズ」の登場 アリーズ 電動 採光・採風 1986年、トーヨーサッシは電動ブラインド雨戸 「アリーズ」を発売しました。 アリーズは、閉めた状態でもスラットの角度を調整することで、 採光や採風に配慮できる高機能商品でした。 防犯や台風対策だけでなく、 光と風をコントロールするという新しい価値を窓に加えた商品です。 1990年代 ステンカラーと高断熱化への転換 ステンカラー ペールグレー セピアブラック 断熱サッシ バブル期から平成初期にかけては、 ブラックや濃いブラウンに加えて、 ステンレスのような落ち着いた金属色が好まれるようになります。 新日軽では、セピアブラック、ペールグレー、 CBブラウン、CBステンなど、 外壁や玄関ドア、エクステリアと合わせやすい 独自のカラー体系が展開されました。 1992年にはトーヨーサッシがトステムへ社名を変更。 同年には「アリーズⅡ」も登場しました。 1995年には断熱・防露を意識したアルミサッシ 「サーマル」が発売されるなど、 窓に求められる性能が変化していきます。 1999年~2000年代前半 オータムブラウン、シャイングレーとペアガラス オータムブラウン シャイングレー 複層ガラス 省エネ住宅 住宅外観は、濃いブラック一色から、 やわらかなブラウンや中間的なグレーへ移行します。 トステムではオータムブラウンやシャイングレーが 代表的な定番色となり、 新日軽ではCBブラウン、CBステン、ペールグレー、 セピアブラックなどが広く展開されました。 同時に、単板ガラスから複層ガラス、 いわゆるペアガラスへの移行が本格化します。 1999年時点では、新築戸建住宅における複層ガラスの面積普及率は まだ約3割でしたが、2000年代を通じて急速に普及しました。 2000年代 窓シャッターが雨戸に代わる定番設備へ 窓シャッター 電動シャッター 省スペース 戸建住宅では、横方向に雨戸を収納する戸袋付きサッシから、 上部へ巻き上げる窓シャッターへの移行が進みます。 窓シャッターは戸袋を設ける必要がないため、 外観をすっきり見せやすく、 狭小地でも隣地側へ雨戸を引き出す必要がありません。 総二階建てや都市型住宅との相性もよく、 新築住宅の定番設備になっていきました。 2006年頃~2010年代 Low-E複層ガラスとアルミ樹脂複合窓 Low-E複層ガラス アルミ樹脂複合 断熱性能 複層ガラスが普及した後、 ガラス表面に特殊金属膜を設けたLow-E複層ガラスの採用が増加します。 窓枠についても、室外側にアルミ、 室内側に樹脂を使用するアルミ樹脂複合窓が普及。 サッシは「雨風を防ぐ建具」から、 住宅全体の省エネルギー性能を左右する重要な建材へと変わっていきました。 2011年 トステムと新日軽がLIXILへ統合 LIXIL ブランド統合 2011年、トステム、新日軽、INAX、サンウエーブ、 東洋エクステリアの主要ブランドがLIXILへ統合されました。 統合後も、旧トステム系・旧新日軽系の商品は補修部品や交換対応の対象として残り、 現在の窓リフォームの現場でも、それぞれの色名や商品名を目にすることがあります。 2020年代 ダスクグレーと高断熱窓の時代 ダスクグレー トリプルガラス 樹脂窓 窓リフォーム 現在は、ブラックより軽く、 シャイングレーより濃いダスクグレーなど、 建物の輪郭を引き締める低彩度色が注目されています。 一方で窓の性能は、Low-E複層ガラス、 アルゴンガス入り複層ガラス、トリプルガラス、 樹脂窓へと進化しています。 新築住宅だけでなく、既存住宅の窓を内窓やカバー工法で改修する 「窓リフォーム」が国の省エネルギー政策としても重視される時代になりました。 トーヨーサッシ・TOSTEM・LIXILの代表的なアルミカラー 主な時期 ブランド 代表的なアルミカラー 住宅デザインとの関係 1960年代後半~ トーヨーサッシ シルバー 初期のアルミサッシ。素材感を生かした明るい金属色。 1970年代~ トーヨーサッシ ゴールド系 アンバー ブロンズ 瓦屋根、木目、和風外観との調和を重視。 1980年代~ トーヨーサッシ ブラック ホワイト 洋風住宅、出窓、高級住宅の重厚な外観に対応。 1990年代~ TOSTEM ブラック ブラウン系 ステン系 ホワイト 平成住宅の多様な外壁色や玄関ドアとのコーディネート。 1990年代末~ TOSTEM オータムブラウン 赤みを抑えた落ち着いたブラウン。現在まで続く定番色。 2000年代~ TOSTEM シャイングレー ナチュラルシルバー モダン住宅やタイル外壁に合わせやすい中間色・金属色。 2011年~現在 LIXIL ブラック オータムブラウン シャイングレー ナチュラルシルバー ホワイト ダスクグレー 外壁、玄関ドア、エクステリアを含めた外観全体の統一。 新日軽の代表的なアルミカラー 新日軽は、トーヨーサッシ・トステムとは異なる独自の商品体系とカラー名称を持っていました。 現在でも旧新日軽商品の修理や窓交換を行う際には、 「セピアブラック」「ペールグレー」「CBステン」といった色名が使われます。 主な時期 代表的なカラー 色の特徴 現場での印象 初期 シルバー アルミ素材の印象が強い明るい金属色。 昭和期の初期アルミサッシで見られる。 1970~1980年代 ブロンズ系 和風住宅に合わせやすい茶系のアルマイト色。 瓦屋根、雨戸付きサッシ、木目外壁との組み合わせが多い。 1980~1990年代 セピアブラック 真っ黒ではなく、わずかに茶系を感じる濃色。 新日軽を代表する濃色。高級感のある外観に多い。 1990年代~ ペールグレー 明るく柔らかなグレー系。 外壁の色を選びにくく、平成期の住宅で広く使われた。 1990年代後半~2000年代 CBブラウン 落ち着いたブラウン系の表面仕上げ。 サッシ、玄関ドア、エクステリアで統一しやすい。 1990年代後半~2000年代 CBステン ステンレス調の中間色。 モダン住宅やタイル外壁に合わせやすい。 2000年代 ファイングレー 明るさを抑えたニュートラルなグレー系。 商品系列によって採用状況が異なるため、商品名との確認が重要。 各年代・商品別 ホワイト 洋風住宅向けの明るい色。 経年後は汚れや色差が目立ちやすいことがある。 ※新日軽のカラーは、住宅サッシ、玄関ドア、エクステリアなどの商品系列によって 採用時期と販売終了時期が異なります。同じ色名でも、製造年代や表面処理によって 見え方に差が生じることがあります。 雨戸から窓シャッターへ。窓まわりはどう変わったのか 昭和の戸建住宅を象徴する「雨戸付きサッシ」 昭和の戸建住宅では、引違い窓の外側に雨戸を設け、 建物の端に設けた戸袋へ収納する形式が一般的でした。 雨戸は台風や強風対策だけでなく、 夜間の防犯、目隠し、冷気の抑制にも役立ちました。 一方で、毎日横方向へ引き出して開閉する必要があり、 戸袋を設けるための外壁スペースも必要です。 都市型住宅と相性のよい「窓シャッター」 窓シャッターは、スラットを窓上部のボックスへ巻き取ります。 横に戸袋を設ける必要がなく、 外観をすっきり見せやすいことが大きな特徴です。 住宅が総二階化し、敷地が狭くなり、 外壁デザインがシンプルになっていくにつれて、 雨戸よりも窓シャッターが採用されるケースが増えていきました。 アリーズが提案した「閉めても光と風を取り入れる窓」 一般的な雨戸やシャッターは、閉めると室内が暗くなります。 アリーズは、ブラインド状のスラットによって、 外部からの視線を抑えながら採光や採風に配慮するという、 当時としては先進的な考え方を持つ商品でした。 現在の採風・採光タイプの電動シャッターにもつながる、 高機能窓シャッターの先駆けといえる存在です。 ペアガラスは、いつから標準になったのか 「ペアガラスは何年から標準ですか」と聞かれることがありますが、 全国で一斉に標準仕様へ切り替わった年があるわけではありません。 複層ガラスの普及は、地域、住宅会社、建物価格帯によって大きく異なりました。 寒冷地や大手住宅メーカーでは比較的早く採用されましたが、 温暖地域の建売住宅や共同住宅では単板ガラスが長く使われた例もあります。 新築戸建住宅における複層ガラス普及の目安 1999年:面積普及率 約34% 2001年:約49% 2003年:約61% 2006年:約80% 2011年:約93% この推移を見ると、複層ガラスは2000年代前半から急速に増え、 2000年代後半から2010年代初頭にかけて、 新築戸建住宅では事実上の標準仕様になったと考えるのが適切です。 その後は、通常の複層ガラスからLow-E複層ガラスへ、 さらにガス入り複層ガラスやトリプルガラスへと高性能化が進んでいます。 サッシの色から築年数は推定できるのか サッシの色だけで建築年を断定することはできません。 同じ色が長期間販売されることもあり、 建築後に窓だけ交換されている住宅もあるためです。 ただし、次の要素を組み合わせることで、 おおよその年代を推測できる場合があります。 確認する部分 年代推定の手掛かり アルミカラー シルバー、ブロンズ、ブラック、ステン系、グレー系などの流行。 メーカーラベル トーヨーサッシ、TOSTEM、新日軽、LIXILなどのブランド表記。 商品名・型式 戸車、クレセント、シャッター、雨戸などに表示されている場合がある。 ガラス 単板、網入り単板、複層、Low-E複層などの構成。 雨戸・シャッター 木製戸袋、鋼板雨戸、アルミ雨戸、手動シャッター、電動シャッター。 窓の形式 出窓、欄間付き引違い窓、単体サッシ、雨戸一体枠など。 色だけで判断しないことが重要です 例えば、ブロンズ色だから必ず1970年代とは限りません。 ブロンズ系の色は、その後も一部の商品や住宅で採用されています。 反対に、築年数が古い住宅でも、 カバー工法や外窓交換によって新しいサッシに変わっている場合があります。 正確な商品特定には、ラベル、刻印、部品形状、枠構造などの確認が必要です。 窓の歴史は、日本の住宅の歴史でもある シルバーのアルミサッシは、高度経済成長期の住宅大量供給を支えました。 ゴールドやブロンズは、瓦屋根や和風住宅の外観を彩りました。 ブラックと出窓は、1980年代の洋風住宅や高級住宅を象徴しました。 ステンカラーやグレー系は、平成の落ち着いた外観に調和し、 窓シャッターは戸袋のない都市型住宅を支えました。 そして現在、窓は断熱、省エネルギー、防犯、採光、採風を担う 高性能な住宅設備へと進化しています。 普段は何気なく見ている窓ですが、 その色や形、ガラス、雨戸、シャッターをよく観察すると、 住宅が建てられた時代の価値観や暮らし方が見えてきます。 古いサッシの修理・交換もご相談ください 古いトーヨーサッシ、TOSTEM、新日軽の窓でも、 部品交換、内窓設置、ガラス交換、カバー工法など、 状況に応じた改修方法をご提案できる場合があります。 窓の動きが悪い、すき間風や結露が気になる、 雨戸やシャッターを電動化したいといったお悩みも、 お気軽にご相談ください。ここを「クリック」! 記事について 本記事は住宅用サッシを中心に、メーカーの公開資料、旧商品情報、 カタログおよび業界資料をもとに構成しています。 商品やカラーの採用時期は、地域、商品系列、仕様によって異なる場合があります。 ビル用サッシのアルミカラーは、陽極酸化皮膜、電解着色、焼付塗装、 メーカー記号、個別指定色など住宅用とは異なる体系を持つため、 本記事の対象には含めていません。